billabong pro j-bay 2010

billabong pro j-bay 2010

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photos by snowy / text by yuki

コンテストピリオドがスタートするとともに素晴らしい波がやってきて、6フィートオーバーのクラシカルなJベイで、初日からアクセル全開の試合がスタート。そのまま4日目のファイナルデーまでノンストップのコンテストになった。それを制したのは地元のジョーディ・スミス。開催国の南アフリカにとっては最高の結末になった

南アフリカ、Jベイのビラボンプロ。30年の歴史を誇るこのイベントだけど、この波が発見されたのはもっと昔。1964年のイースターホリデーまでさかのぼる。46年前。そうですね、これ読んでるほとんどの人がまだ生まれてないですね。あ、私は生まれてますよ、もちろん。500歳越えの教祖様ですから。 1964年のイースターに、ケープタウンからやってきた6人のサーファーが砂丘と岩場のビーチでブレイクするスーパーチューブスで初めてサーフィンをした、というのが通説のようだ。もちろんそれはいい波に見えたからそこを選んだわけだけど、実際に乗ってみて、ここまでいいとは想像も出来なかったに違いない。 何しろここの波は本当にマシンブレイクなのだ。フェイスも広くてチューブセクションもあり、サーフィンのすべての要素が楽しめるオールマイティな波。しかも、延々それが続く。光もきれいで写真にしても美しい。ホント、あなたがレギュラーフッターなら、一度はここに来てこの波を見たほうがいい、と私は心からオススメする。 で、今年のJベイのビラボンプロは、始まったとたんに終わった。ASPコンテスト史上最短終了記録。コンテストピリオドスタートから4日目でファイナル。
まぁ、WTが今シーズン後半36人フォーマットになるので、消化可能日数は短くなるけど、この時点での48人フォーマットでは最短記録だ。
南アフリカは今年サッカーのワールドカップがあって、その直後のビラボンプロ開催だったので、地元のスポーツ関連のメディアの取材もいつもより格段に多かったと思う。なんとなく、国全体が世界レベルのスポーツシーンに注目しているといった感じだった。 で、そういうふうに考えると、サーフィンでは南アフリカのヒーローは若きジョーディ・スミスということになる。この試合でWT初優勝をあげることになるわけだけど、試合前の時点ですでに統一ワールドランキング1位だったから、注目度もがぜんアップしていた。 結果的には、ワールドカップの年にサーフィンでも地元のヒーローが大活躍してツアー初優勝、ワールドタイトルレースのトップに踊り出て、その上ワイルドカードのショーン・ホームズも大物のケリー、アンディを破って5位入賞と、南アフリカのためにあったような試合展開になった。南アフリカメディアから見たら、100点満点以上の結末。当然それはそれは盛り上がっていた。 そりゃ盛り上がるわな。日本に置き換えたら、大変なことでしょ、これ。日本人のWT選手がもし出たら、それだけでも大変なことになるはずなのに、それが日本のWTイベントで優勝、世界ランキング1位、ワイルドカードも5位入賞なんてさ、それでいきなりサーフィンブーム大爆発じゃーん。ゴールデンタイムのスポーツニュースも取材に来ますわ、きっと。いいなぁ、それ……って、現状ではどれひとつも実現してない、究極の無いものねだりなんですけどね。 さて、本題に戻って、初日の波はもうまたとないJベイの美しい波。8フィートまでは行かないけど、十分6フィートオーバーのクラシックなスーパーチューブスがいきなりやってきたわけです。 で、初日のその波がピークで、そのあとの3日はそのスウェルの残りと、そのあとに入った小さなスウェル。予報はその後パッタリ波が無くなり、次のスウェルが入るのはコンテストピリオドの最終あたり。ま、そこを待つギャンブルをしなかったために、最短記録になったわけだけど、結果的にはピリオド最終日前の土曜日がファイナルデーよりいい波だったと思う。ま、それを待つのもだいぶ危ない橋だったから、終わっておいて正解かな。 この試合でたった1本の10点満点を出したのはラウンド2のジェイ・トンプソン。ポッカリ穴のあいたその日一番の長くて深いスタンディングバレルをきれいに抜けて、ガッツポーズ。もちろんそれがこの試合でのベストウエイブだったと思う。ただ、ジェイは次のラウンドで負けてしまい、タヒチの後のトップ34には残れなかった。でもこの試合での10点満点は、彼のキャリアのなかでのひとつのハイライトだったことに間違いない。 ここ10年ぐらい、南アフリカのビラボンプロといえばアンディ・アイアンズ対ワイルドカードのショーン・ホームズという因縁の対決が有名なわけで、アンディがいなかった昨シーズンは別として、このふたりはここでは切り離せない組み合わせ。 何しろアンディがワールドタイトルを取りまくっていた頃から、ずっとここでつまずかせられていた相手がショーン・ホームズなのだ。 ショーンはワイルドカードだから、いつだってハイシードの選手の誰かと当たることになるんだけど、なぜかそれがいつもアンディ。そしてショーンが勝つ。ある年なんてショーンがワイルドカードのトライアルで負けて出場できず、帰った翌朝、他の選手のケガのための空きスポットが出来て引き返して試合に出場できたというラッキー。そこでまたアンディと当たって勝つ、というドラマ。 今回も最初にマンオンマンで当たったのはケリーで、そのケリーに勝ち、ラウンド4でアンディと当たり、勝って5位。しかも僅差。アンディはラストライドの前の波で水中カメラマンに進路をふさがれたか波を崩されたかで、ポイントを伸ばせなかったのが敗因とも言えるアンラッキーだった。なんか本当にアンディはここでは何かにとりつかれているというか、ショーンに神様がついてるというかだな。 ショーン・ホームズの強さは、その波の選択とサーフィンの見せ方の上手さにあると思う。サーフィンの技術そのものを較べれば、アンディやケリーに勝つチャンスはほぼ無いのだけど、いい波に乗ってギャラリーを魅了して勝ち進んでいく。
今回のラウンド3も、ひとつひとつのターンを見れば間違いなくケリーなんだけど、結局いい波は全部ショーンが乗ったから、しょうがないね、という印象に落ち着いてしまうような試合展開だった。
ケリーの調子は決して悪くは無く、相変わらずまったく止まらないスムーズなサーフィン。いつ見ても、本当にこのオジサンはサーフィンうまいなぁ、と思う。技術的には間違いなく世界一。荒さみたいなものがまったく無く、ディテールを見れば見るほど、その完成度の高さは群を抜いている。特に注目すべきはボトムターン。あのボトムターンが真似出来るなら、あなたのサーフィンは相当上のレベルに何階級も特進できるはず。ボトムターンをかけている場所とその深さは、本当にこの人ならではだと思う。それあっての、あのトップでの派手なのに安定したターン、止まらない、失速しないサーフィンにつながる。サーフィンはボトムターンだよ、やっぱ。 アンディもこの試合はいい感じだった。復帰直後のオーストラリアでは、正直言って、うーん、あれじゃ無理かな、アンディがいない間に世の中だいぶ変わったもんな、と思っていたけど、この試合で見たアンディはだいぶ追いついてきていて、久しぶりにアンディの、脚力で無理やりボトムに持ってくるカーヴィングを見た。 ファニングもタジもデーンもいい感じだったけど、日々波数の少なくなっていくコンディションで、上手くベスト2が揃えられずに負けていった感じだった。別に何が悪いという感じじゃなかったけど、上手く自分のペースで試合を運べなかったという印象。 逆に、どのヒートも完璧な出来ではなかったのに、最終的には勝ち進んでいったのがファイナリストのアダム・メリングとジョーディ・スミス。 アダムは、あれ、この人ってこんなにサーフィンうまかったんだ、って感じで、今回はその存在を確実に世界中に見せ付けた。ファイナルでは負けはしたものの、この結果は大きな自信につながったと思う。 ジョーディはセミのビード・ダービッジ戦でラスト5分までコンビネーション負けだったのをひっくり返してのファイナル。これは今シーズンからのジャッジが、エアーを大きく評価するクライテリアに助けられた感じがする。ジョーディにとってライディングの中にエアーを組み入れてスムーズに乗りこなすのはもうまったく問題なく出来る感じで、違和感無くリップと同じマニューバーのひとつとして、軽い感じのエアーを途中でメイクしながらインサイドまでまとめてくる。もちろん今までもそれは高く評価されはしたが、今年ほどじゃなかった。今シーズン、ジョーディとデーンが上位にガッチリ食い込んでいるのは、ジャッジクライテリアの変更も大いに影響していると思う。 ただし、シーズン後半になって一部のサーファーから、エアーを高く評価しすぎだ、という声も上がっていて、この先はどうなるのかはわからない。確かに一部のカーヴィングターンはエアーより難しいことを、多くの選手が認めているので、その意見は取り入れられていくのだと思う。なにしろ彼らがやってることは、彼らしか出来ないレベルの高いもので、ジャッジにもその難易度は実際のところわからない。だからこそ選手たちと密なコミュニケーションをとる必要があるのだし、それを実践しているのがWTだ。選手も口を出すし、ジャッジも聞く耳を持つ。 ジョーディはもうこの試合では始めからずっと応援団に助けられた感がある。日々ブブゼラ鳴りまくり。ドルフィンしていても聞こえたらしいから、それは相当心強かったと思う。逆にアダム・メリングにしてみれば、相当嫌な感じだっただろう。ま、これがホームとアウェイの差。仕方ないといえば仕方ないけど、メンタル面では大きなハンディになったと思う。 試合が終わった数日後、メールチェックに行ったメディアルームの前にジョーディがいたので、おめでとう、と声をかけたら、ありがとう。いやー、ホント、ヘビーだったよ。と笑った。WT初優勝の重さをずっしりと感じたんだと思う。 この時点で統一ランキングもワールドタイトルランキングもジョーディがトップ。文字通り、たったひとりの世界一、追われる立場になった。”

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