hurley pro trestles

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コンテストに出場するメンバーが36人に減ったかわりに、一試合に2度のルーザースラウンドが設けられている新しいフォーマット。そのフォーマットでの初めての試合がこのハーレイプロになった。運よく最高の波に恵まれて、世界最高レベルのサーフィンが繰り広げられ、近未来のサーフィンスタイルを見ることが出来た。

2011年シーズンからの新しいシステムのスタートに向けて、トランジションイヤーの今シーズン。WTの人数をトップ45からトップ34にシーズン中盤でカットする。
そのカットに向けての最終戦になった今シーズン5試合目のタヒチ、ビラボンプロだったが、今年は開催時期が8月終わりから9月にかけてと、少し変わったからか、いまひとついい波に恵まれずに終了した。
そのタヒチ終了後に決まった後半のWTを戦うトップ34、WTランキング上位32人と、ワイルドカード2名はキーラン・ピロウと、ゲイブ・クリング。このトップ34にイベントごとのワイルドカード2名が加わって、36人フォーマットになるわけだ。トラッスルズのハーレイプロがその新フォーマットのお披露目になった。 新フォーマットはラウンド1が3人ヒートで12ヒート。1位がラウンド3へ、2位3位がマンオンマンのラウンド2。で、ラウンド3も同じくマンオンマン。ま、ここまでは今までと同じで、ただヒート数が減った感じ。違うのはラウンド4。ここで勝ち残っている12人がまた3人ヒートを戦う。1位がクオーターファイナルへ、2位3位がラウンド5へ。そう、ラウンド4でまた敗者復活があるんですよ。 実際見てみると、なんか、ラウンド4から先だけでなんとなくオッケーかな、って感じがしてしまったけどね。まぁ、ラウンドの多い分、スター選手がたくさん見られたりするって話ではあるんだけど。 で、南アフリカの試合が南アフリカのためにあったような結果だとしたら、このカリフォルニアのトラッスルズは、アメリカのためにあったような結果の試合。 優勝ケリー、ランキングトップに返り咲き。でもって、その後のフランスの2位でもう実質10度目のワールドタイトル確定。 後はいつ決まるか、みたいなことに興味が移りつつある。すでにV10おめでとうキャンペーンスタートなんじゃないだろうか。
あっという間の逆転王手に、ジョーディはフランスで笑いながらコメントしてた。ツアーのみんながなんとかケリーを止めようと躍起になってるけど、実際問題、打つ手はないよね。いったいケリー相手に何が出来るって言うのよ、とケリーの好調ぶりをあきれたように笑っていた。 さて、今年のトラッスルズは、その真価を発揮。今シーズンで最もいいトラッスルズの波がコンテスト期間中にやってきた。日本の夏がやたら暑くて、120% 異常気象だったのと同じように、カリフォルニアの夏もいつもの夏とはちょっと違ったようで、特に波はまったくダメだったという話だ。そんな夏だっただけに、このタイミングよく訪れた波に選手もギャラリーもウヒャウヒャ。コンテストディレクターのパット・オコーネルとケリーは天気図を見ながら、予想される波に関してウヒャウヒャのチャットを交わしたらしい。しかし、あまりウヒャウヒャでなかったのは私のようなスチールカメラマン。なんかね、例のカリフォルニア特有の朝の霧と雲で、写真はどんより暗め、午後になって日が出てくるころには、逆にギラギラの逆光。タイミング的にあまりフォトジェニックではなかった。ただ、波は本当によかったと思う。きれいな三角。絵に描いたような波で、そうなるとこのトラッスルズはみんなが最も実力を出しやすい波ということになる。 ツアー全員がやりたい放題。で、やりたい放題やってる者同士の勝負。 それが面白くないわけがないわけで、毎年ここでは何年か先のサーフィンのスタンダードが見られるようなことになるんだけど、今年はまた格別だった。 優勝したのはケリーだけど、すごかったのはクオーターまでのデーン・レイノルズ。ホント、あの人がやりたい放題やって、うまく回ったら、現状では誰も勝てないな。ケリーでも無理。特にあのテール抜いてエアーっぽくリップして、フェイスの上のほうにノーズ刺してそこを基点に回ってフェイスの真ん中辺りでスケッグファースト(昔あったんです、こういうワザ。スケッグってすでに死語かー)状になり、 フェイスで回りきってボトムに下りた時点でボトムターン、みたいなヤツの成功率の上がりぶりと、クオリティの上がりぶりはすごかった。もうね、このまま行くと、何年か先にはみんなあれやらなくちゃならないんだよ、きっと。 観戦に来ていた西井浩治プロと冗談で笑ってたんだけど、何をするにも今や、完璧にスケッグファーストでバランス良く回れるようにしないとだね。まずはそこから練習かー なんて。 ただ、今回のデーンのセンセーショナルなサーフィンを、冷静に分析してたのがケリーだ。デーンのサーフィンはビーチブレイクでどれだけハードに当てるか、飛ぶか、というサーフィンで、今はそれをジャッジが高く評価する時代なんだ。ただ、そういうサーフィンのスタイルには流行りすたりがあって、それはWTでも同じで、以前ツアーの流れがビーチブレイクからチョープーやフィジーなんかのポイントブレイクのバレル勝負にシフトしたように、今はあのビーチブレイクでのハードチャージにシフトしているってこと。そういう流行は時代ごとに繰り返されるものなんだ、と。
もうね、このオジサンの分析力というか、考えというか、経験からくるものなんだろうけど、恐ろしく正しいね。 そう、今はあれ。でもまたそのうちビッグカーヴ、ディープバレルの時代もやってくるってこと。それを繰り返しながら、それぞれのレベルがどんどん上がってくわけよ。 で、このオジサンの分析力のもっとすごかったのはラウンド4からファイナルデーのラウンド5でのヒート運びの大きな変化。 前日のラウンド4の3人ヒートでケリーはオウエン・ライトにやられてルーザースラウンドに回った。そのラウンド4はけっこう微妙なヒートで、私にはケリーにポイントが低く感じられた。もちろん本人も納得がいかなかったようで、時間をかけてその日の自分の敗因を分析し、解決してきたんだろう。翌日はライディングの組み立てそのものをガラリと変えてきた。 前日までは早いうちのエアーと、その後のリップみたいな感じの組み立てだったのが、その日はフィニッシュでエアーを確実にメイク。ファーストマニューバーでのエアーみたいな、リスクを払う組み立てはしてこなかった。それがあまり高く評価されていないという判断だと思う。 それと同時に、オフィシャルのサイトでギャラリーたちの書き込みを読んで、自分のサーフィンが人からどういう風に見えているかをチェックし、参考にしたという。 これ、すごくないですかー オジサンあくまで客観的で冷静。そう、サーフィンの試合って、自分がいいと思っても、人からそう見えなかったら、どんなに難しいことしてても試合では勝てないんですよ。だって、ジャッジという別の人が見て評価するわけだから。このね、人からどう見えてるか、ってあたりまで研究するって、しかもケリーがそれやって、戦い方変えてくるって、そりゃね、みんな勝てないわな。天才が努力するとこうなっちゃうわけよ。 ワイルドカードはロブ・マチャドとコロヘ・アンディーノ。ロブは相変わらずいい味出してて、うーん、この人はずっと変わらないんだなぁ、って感じだった。スムーズでメロウ。サーフィンも柔らかく、スタイル全開。ツアーを去ってもまだまだ世界中で人気の高いサーファーのひとりだ。ロブはまったく変わらずだったんだけど、変わってたのはコロヘ・アンディーノ。以前ASP選手で、サンクレメンテのレジェンドのひとり、ディノ・アンディーノの息子さん。シェーン・ベッシェンがコーチしてるらしいけど、なんか急に大人になってたな。ジェイミー・オブライエンが巨大化したときとおんなじ感じ。ガイジンって何でああなんだろう。ある日突然大人になってるよな。 さて、この試合絶好調だったミック・ファニング。セミでケリーの魔法にハマった感じになるまでは、もう優勝候補筆頭。切れのいいサーフィンと、恐ろしいぐらい正確なヒートでのペース配分、リズム作りのうまさがとても印象的だった。しかし、セミのケリー戦では、今までのミックはどこに行っちゃったのー ってぐらい別人。まるで自分のサーフィンが出来ないまま敗退してしまった。
しかし、そのお返しは次のフランスのファイナルでミックが果たした。フランスのファイナルで再び顔を合わせたこのふたり。そこではこの逆パターンで、今までの好調がウソのようにケリーがまったくいい波に乗れずに、ミックに優勝をさらわれた。 ミックと同じように好調だったデーン・レイノルズもジョーディ・スミスも、ミックと同じような負けかただった。何かにとりつかれた感じ、というか別人になっちゃった感じ。それまではもうガンガンで、ついにこの若手ふたりの新時代到来か、みたい勢いだったのが、負けたラウンドではふたりともまったくいいところナシ。この辺がこのふたりの課題だな。ケリーの強さはラウンドワンからファイナルまで、壊れることなく、確実に各ヒートで自分のサーフィンが出来ること。それは年間を通して、どの試合でもきちんと自分のサーフィンが出来ることでもあり、その辺がデーンやジョーディにはまだ足りない部分。タイトルを取るにはこれが必要不可欠な要素なんだけどね。 ジョーディは前日に折ったマジックボードが相当良かったようで、バックアップボードの調子の悪さにそうとうイラついたようだった。海から上がったとたんに、そこにいたキッズに板あげちゃってたし。もらったキッズ大ラッキー。 2位になったビード・ダービッジは、もうすぐお父さんになるので、ポルトガルはスキップするとのこと。だから、この2位で安心して産休取れる感じかな。 ケリーはこれでランキングトップ。次のヨーロッパレッグのフランスが2位、ポルトガルのダメ押し優勝で、もうV10確定といってもいい状況だ。取ったらやめるのかなー 1ダース、どうだろ。でも来年のメンバーが入れ替わる新しいシステムでやってみたいんじゃないかな、ヤツの性格としては……。”

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