ジョーディ・スミス

ジョーディ・スミス

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まず最初に、いったいいま、どこに住んでるの?

ケープタウンのランディドーってとこのプライベートビーチ。白砂の海岸が見渡せる2階建ての家だよ。
そこは、はじめに底ぼれのするバレルからはじまって、その直後にエアーのセクションへとつながるビーチブレイクなんだ。波はチョー楽しいし、水が信じられないぐらい透明なんだよね。背後には巨大な山がひかえてる。テーブルマウンテンって言うんだ。

5年前、君は18歳だったよね。ケリーの座を継承する次なるビッグスターと呼ばれたわけだけど、そのことについて教えてくれるー

そんなたいした評判じゃなかったよ。19か20歳になって、はじめてインターナショナルな舞台にでるようになったんだ。10歳から注目を浴びてるコロヘやジョンジョンが感じてるようなプレッシャーは俺にはなかったな。

他の誰よりも影響されたって人はー

2人いる。ジャスティン・マットソンとジョー・クリモ。うちの父親はロストの商品に関する南アフリカのライセンスを持ってたから、彼らがやってくると、一日中彼らのサーフィンを見てた。誰もやってないときに、クリモはすでにシュリンクラップをやってたんだぜ。まるで水のうえで踊ってるみたいだったよ。

彼らは、急激に進化してた君のサーフィンに気付いてくれたー

あんまり気付かなかったみたいだね。毎晩パーティーしまくってたな、あの人たち。

可能な限り毎日サーフしてるー

一日中サーフィンするときもあれば、まったくしない日もある。平均すると週に8回サーフィンする。1回に費やす時間は1時間半ぐらい。

平均的に1回のセッションで何本乗るー 波を追いかけまわし、臭い波にも手を出すのー それとも選んで乗るー

うちのプライベートポイントは、波がめちゃコンスタントにはいってくるから、1時間やったら50本から70本乗れる。ロングライドはできない波だからね。テイクオフしたらプルインして、出てきたらかっ飛ぶと。混雑することは絶対ないし。

自己最長セッションって、どのくらいの長さでしたー

11歳のとき、ダーバンのニューピアで7時間やったことある。4時間だか5時間経った後は、数時間くっちゃべってたんだけどね。干潮のあいだサーフしつづけて満潮になるまでやりたかったんだ。

マン・ベアー・ピッグっていうニックネームは気に入ってるー

あれはミッチ・コールボンかディオン・アギウスがつけたニックネームだな。あの日は特に腹が減ってて、遠慮もせずに手当たり次第そこからじゅうにあるものを食べてしまったんだ。うわー、ジョーディは腹ペコなんだなって、みんなの目が点になってた。まるで俺が原始人かなんかみたいに言うんだよ、あいつら。

誰がなにを言おうとそんなの気にしないし、辛らつな意見とかにも免疫ができてるってディオンが君の事を言ってたけど、そうなのー

本当。それは本当のこと。

いちばん仲のいい友達はー

本当に仲いいのは5人いる…スティーブ・ニコルソン、トラビス・ロギー、ワーウィック・ライト、ダミアン・ファレンフォート、チャド・ドゥ・トイ。

ワールドタイトル候補である君と、必死にツアー回ってる底辺にいる連中との差ってなにー

結果がちがうだけ。

それ以上になにかあるはずでしょ。基本的な違いというか。なんだか教えてよ。

派手なエアーと高度な技を武器に持ってるかどうかってことじゃない。

ケリーとデーンが辞めたらプロサーフィンは地獄に堕ちますかねー

ノー。だってミック、タジ、ジョエルって、ほかにもいるじゃん。

デーンに影響された部分ってあるー

自分が嫌になる。彼のサーフィンを見てるのはサイコーさ。自分のサーフィンをしたくなるね。たまにスコアはどうでもよくなっちゃって、ギャラリーのためにサーフィンしちゃう。

これまでヒート中の出来事で、いちばん相手がせってきたのってどんなことだったー

4年前、ウエスタン・オーストラリアでダン・ロスともう1人誰だっけなー ー なにしろ彼らがヒート中ずっとハッスルしてきてさ、乗れたのはたったの1本だけ。しかもその波でインターフェアを取られた。羊ども、息ができないほど近づくんじゃねー!って言ってやった。もっと離れろ、うぜー!ってね。

負けるとボードに当たるタイプー

以前はそうだったけど、もうやらない。指の関節を痛めて、それから自分の手の平をパンチするようになったけど、もうそれもやってない。ボードに怒ったってしょうがないじゃん。

ツアーでもっとも優しさを感じた出来事ってなんだったー

昔セントラルコーストのソルジャービーチで4スターに出てた。コンテストのタワーの下でボードバックにくるまって寝てたら、レッドブルのアンディー・キングが泊まる場所と食べ物を提供してくれたんだ。結果的にそのコンテストで優勝できたんだ。

ツアーでもっとも不愉快な思いをしたのはー

正直言って、人の頼みごとをきいてくれる人間ってあまりいないね。

フィジーでやったグローブのイベントでの出来事なんだけど、ルーキーであるキャンスデルとダービッジが食堂にはいってきたら、みんな知らんぷりして、あの可愛い2人に「一緒に食べようぜ」って誘ってあげる人がいないんだ。結局、いちばんランク下のジャッジと食べる羽目になったんだよ。大人気ないと思わないー

まさに、そのとおり。最初の年は最悪だったな。みんな、「あー、ルーキーね。ずいぶん騒がれてるじゃん、おまえ。どんだけすごいか、見せてもらおうじゃねーか」って感じだった。ヘマしてあの年は26位で終わっちゃったし。

それって歓迎されなかったってのもあるわけー

理由はいろいろさ。自分の居場所をみつけられなかった。とんでもないことをしてたよ。ニューボードをヒートで使ってみたり、とにかく準備が充分じゃなかった。

旅をするなか、デーンとベッドルームをシェアしたことはあるー シングルのベッドが、ほら、こう並んでてさ、夜になるとふたりで囁き合うとかー

シャガとマット・ガイと行ったウエスタン・オーストラリアのトリップで一度同じ部屋になったことある。何千人って来たトリップだったんだけど、同室で楽しかったよ。

秘密の言い合いっこしたー 囁き合ったー (これがきっかけでゲイの世界に足を踏み込んだかと思って聞いてみた)

ノー! まったくそんなことないから。

デーンは、ほんとうは競争心旺盛なんだよ。そういうこと認めないし、話さないけど。

もちろん、そうに決まってるじゃん。そうじゃなかったら去年世界で4位だか5位になってないよ。みんなと同じように彼だって勝ちたいのさ。テイクオフするときの彼といったら、鬼のような顔してるんだぜ。トラッスルズとかだと、立つまえからすでにマッハ10ぐらいスピードでてる。

自分のキャリアでもっとも誇りに思ってることはー

自分が夢見てた生活の中にいま実際住んでることかな。自分のためにやってるんだけど、同時に父のためでもある。

お父さんがしてくれた忘れられない最高のことってー

昔、マックを死ぬほど買ってくれた。母は家庭料理を作ってくれ、父はマックに連れてってくれたのが最高にうれしかった。

お母さんがしてくれた最高のことはー

学校行ってたとき、僕の宿題をやってくれたのは、うちのママ。

記憶にある人生最大のハッピーだった日って、どんな日ー

彼女と知り合った日。なんかホモっぽいから言いたくないんだけど、そうなんだからしょうがないでしょ。競馬の会場で知り合ったんだ。あんまりカッコよくなかったからなぁ、オレ。なにしろメチャクチャ酔ってた。そんで、ハナっから相手にしてくれなくてさ。電話番号を聞いたら、あげるわけないじゃない、って感じであしらわれてさぁ。デートに誘いたいんだけどって言ったら、それもあり得ないわねってきっぱり断られた。

それをどうやって逆転させたのー

知らないよ。そのせいでもっと酔っ払ったのは憶えてるけど…。

どうやって彼女の心を奪ったんだろうねー

ありのままの自分をみせたからー オレはけっこういいヤツなんだよ。

ワールドタイトル候補になるには、どんな素質が必要ー

まだそれは模索中さ。もっとも大事なのは、自分の全てを捧げることかな。その次は、才能。それと同時に笑顔でやらなきゃダメ。こんな貴重な体験をできる人間ってわずかしかないんだから。

犠牲にしてもいいものは、なにー

邪魔立てするものすべて。

犠牲するに値しないものはー

家族、愛してる人たち、それ以外の大切にしてる人たち。

下手くそだったころにやった最も愚かな行為ってなにー

生まれてはじめてのコンテストで、自分が一番だと思ってて、ぜったい勝てるって信じてた。前夜祭である人が、3本しっかりビーチまで乗るんだぞ。3本しかスコアされないからな。でも、10本まで乗っていいんだぞって言われ、サーフィンっていうものは簡単なんだなって思った。
翌朝、ホーンが鳴ったと同時に沖に向かいショアブレイクに近い短い波を3本慌てて乗ると、「勝った!勝った!勝った!」って、叫びながらビーチに駆け上がったんだ。
他の選手はなんで沖に戻るんだろうー って不思議には思ったんだけどね。そしたら、父が、おまえはなにやってんだー って言うから、なんでー 3本乗ったじゃない。そんでいちばん速く戻ってきたでしょー だから俺が1位だよって言ったら、「いい波を3本乗らなきゃいけないの!これはレースじゃねーんだ!」って怒鳴られた。あのとき自分のことが世界一愚かな人間に思えたね。

テーマを決めて練習したりするー 例えば、ロデオだけとか、フィナーだけみたいに。

自分がなにをするかを意識することはないね。セクションが迫ってきたら、自分の気持ちに素直になってやるまでのこと。たまに見ていられないようなどん臭いことをするときも、もちろんある。

バックサイドのスーパーマンについて教えてください。

ここ何年もトライし続けてきたんだ。モダンコレクティブの直前に完成させて、レイキーズで決めたときはストークしたね。みんなあんなの見たことなかったでしょ。コンテストでも使ってみたけど、ジャッジも何点つけていいかまだ分かってないみたいだよ。それはカエルみたいだからって噂…あはは。カイ・ネヴィルがそう言ってた。ディオン・アギウスとレイキーズで、カエルみたいじゃんって話してて、そんじゃ、フロギーにしちゃおうかってことになった。

他の連中と決定的な差をつけた、君を象徴する技といったらなんでしょうー マカズでやったロデオかなー

それか、17歳のときハワイでやったやつー マカズで成功させたのは、一瞬にして世界に広まっていったね。ヤフーのカバーになったんだから。あれこそ決定付けた瞬間かもね。長いこと話してなかった連中からも連絡がきたんだよ。子供のころの学校の友達とか、絶対メールを送っても返事をよこさない連中とかから連絡がきた。あれで一皮剥けたかも。

好きで見るのは誰のサーフィンー

オールドスクールのサーフィンかな。うちの親父は50年代と60年代のサーフィンにハマってる。あとディーン・モリソンの新作DVDにはヤラれたよ。なんて、たくさんのバレルに乗ったんだろう、って。

思い出したくないヒートといえばー

コンテストに振り回されるのは嫌なんだ。イベントにはツーリストとして行ってます。サーフィンは休日のプランの一部だよ。

みんなが知りえないジョーディーの裏技についておしえて。

波にテイクオフするとき、チョー興奮しちまう。立つともっと熱くなって、でかいセクションなんかが目の前に現れてきたりするとテンションは絶好調に達する。どでかいハックやエアーをかませるバリのクラマスのセクションみたいなのは特にね。それとか、バレルね。バレルは流行りすたりがあるけど、ジェイミーの映画を観ちゃったら、もう自分の映画にバレルの映像は入れられないって思うようになった。

なぜー そんな多かったー

すべてのバレルが10点満点級のバレルなんだよ。だから、5点ぐらいのバレルを加えてもしょうがないってこと。比較にならないんだ。

ニューヨークでの新しいコンテストで30万ドル勝っちゃったっらどうしようー なんて考えたりするー

あー、あれね、もちろん。すごい収入になるな。まだ夢にはでてきてないけど、待ち遠しい。勝てることを願ってるよ。実現するといいな。このあいだそのことを話してたばかりなんだ。ニューヨークでやるのは信じられないけど、勝てたらほんとうにうれしいね。

優勝を祝う打ち上げパーティーをやらせたら誰がいちばんすごいかなー

優勝した人なら誰にやらせても一緒。ただ、ケリーだけは別かも。彼だったら入場料とるんじゃないー(笑)

命にかかわるような身の危険を感じたことあるー

何度かある。南アフリカで銃を突きつけられて強盗にあったときとか。
ある日学校からの帰り、ダーバンで襲われて、ちょうど腎臓の下のあたりをナイフで刺された。ポケットの中をあさられ、頭に銃を突きつけられて、もうダメかと思った。「金よこせー」とか聞かないんだよ。ナイフを差し込んでから、盗っていくんだ。「腹ばいになれ。強盗だ!」みたいな感じ。血を流しながら泣いたよ。病院に駈けて行って傷をふさいでもらった。

ダーバンは危ない街だよね。

たまにそういうことが起きる場所だよね。
焼けるような痛さだった。アドレナリンが逆流して、気付いたら指を傷口に突っ込んで走ってた。

地球上でもっとも気に入って場所はー

深い眠りについてるところならどこでも。

(堅木)

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