ランディ・ラリック・インタビュー

ランディ・ラリック・インタビュー

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ランディ・ラリックよりプロサーフィンを語るのにふさわしい人間はそう多くないはずだ。彼は1972年にフレンド・ヘミングスと共にIPS(インターナショナル・プロフェッショナル・サーファーズ)を設立して以来、コンテストシーンに長く関わってきた。1982 年にイアン・カーンがASPを立ち上げると、ラリックはノースショアでトリプルクラウンのプロデュースを始めた。トリプルクラウンは今年で30周年を迎える。

ラリックはノースショアのテラスからも、ASPのボードルームからも、その移り変わりを見てきた。30年の経験から来る彼の考えは、聞いておく価値がある。

彼は何でもオープンに話してくれることで知られている。フランスのイベント後、サンセットビーチにある彼の家で、今最も知りたい、ASPとZoSeaの件について聞いてみた。

ASPとZoSeaの関係は、今後のプロサーフィンにどういった意味があるのかな?
基本的に、ASPは ZoSeaのものになる。他のどの株主の影響も受けないし、ライセンスを持っている大手サーフブランドをメインとするスポンサーや、サーファーたちの影響も受けない。ASPはそれが最大の利益を上げ、かつプロサーフィンをもっと成長させる最良の方法だと判断したんだ。これまでブランド・スポンサーは出来る限りのことをしてきたけど、毎年規模を拡大できるほど安定してはいなかった。スポンサーが投資するお金に見合う利益も出せていなかった。このタイミングはベストだと思うよ。4、5年前のように業界が盛り上がっている時期ではなく、停滞しているこのタイミングで彼らは決断を下したわけだから。これからZoSeaはこのスポーツを私有化し、お金を生み出せるようにし、さらに発展させていく。彼らの目標は、サーフィンをニッチなスポーツから、トップのメジャースポーツとはいかないまでも、注目に値するスポーツとしてその地位を押し上げることだ。 

前にもこの話が出たと思うんだけど、ZoSeaはそんなに優秀なのー タイミングとしても正しいのかなー
正しいと思う。タイミングは正しいと思うし、彼らの頭脳、モチベーション、資金はプロサーフィンを次のレベルに押し上げるはずだ。正直、詳細はまだ決まっていないんだよ。この3週間、詳細を詰める為にミーティングを続けているんだけど、彼らは、僕らがつなげることのできないメディアの世界にコネクションを持っているように思う。それがESPNかFoxかNBCかはわからないけど、それによってメディア業界でのサーフィンの地位が上がることは確実だ。
さらには、各ブランドがお互いに排除しようとする競争がなくなることで、ブランドはASPをひとつの広告宣伝の場として捉え、それだけに集中できるようになると思う。ZoSeaはASPでお金を稼ぎたいわけだから、それはつまり、このスポーツにお金が流れ込むようにするってこと。彼らがリッチになってくれることを願うよ。彼らがリッチになれば、ツアー全体が発展し、選手やメディアにより多くのお金が落ちるようになる。
まあ、これによってサーフィンのソウルフルな側面とか、そのルーツがなくなってしまうというような批判はあるだろうね。でも、プロサーフィンは常に商業的な側面を持っているんだ。そういう意味では、何も変わらないと思うけどね。今後、プロサーフィンがうまく発展してくれることを願うよ。時間が経てばわかることだけど、僕は割と楽観的に見てるよ。

ASPはZoSeaのものになっても、サーファー達は意見を言えるのかな?
ワールド・プロフェッショナル・サーファーズ(WPS)という選手達で構成される団体が、選手の年金を管理しつつ、そこから代表者を選んで経営会議に送り込むことになるはず。ZoSeaに変わっても、その代表者は経営会議に参加できるんだ。僕らイベント主催者側も同じことで、権利所有者達を代表する組織を作って、経営会議に参加する。だから僕らは引き続き意見を言えるんだけど、あくまでそれをコントロールするのはZoSea。今までは各関係者が同じような力を持っていたけど、そのバランスは違ってくる。僕らは意見を言えるけど、決めるのはZoSeaなんだ。

イベントはどういう形になるんだろうか?
イベントの権利はZoSeaが持つ。ライセンスを持っているブランドは、大会に名前をつける権利を買うことになるんだ。今までイベントのメインスポンサーになるには、200万ドルから300万ドルくらい必要だったんだけど、2013年の各イベントは25万ドル、2014年は50万ドル、2015年は100万ドルで名前をつける権利を購入できる。大きな違いは、今後、イベントのスポンサーはウェブキャスト、テレビ、それらの番組製作会社にお金を払う必要が無いってこと。それがこの話が進んでいる大きな理由だね。
スポンサー達はお金をかなり節約できて、運営する必要も無く、責任はZoSeaがとってくれる。今後、ブランドがイベントに自分の会社の名前をつけたいのであれば、ZoSeaからその権利だけ買えばいいことになる。

ZoSeaは、全ての費用を負担しつつ、どうやって利益を出すの?
全てをスポンサー枠と広告枠にして、その権利を売りに出す。ZoSeaはウェブ、マーケティング、ネーミングと全ての権利を持つわけだけど、だからこそ彼らは、客としてブランドや他のスポンサーに留まって欲しいんだよ。それに加えて、彼らは新しいスポンサーを外から見つけて権利を売ることもあるだろうね。彼らは全てのイベントを一元化するつもりなんだ。
同じ製作会社が全てのイベントを担当するから、各イベントは似たような感じになると思う。例えばだけど、NBCと話をつけて、NBCが全てのASPイベントを放送する。ACMEプロダクションと契約して、そのプロダクションが年間通して映像を撮り、アナウンサーはずっとポッツとデイブ・スタンフィールドでやる、とかね。基本的には他のスポーツに近づいていくんじゃないかな。ESPNのスポーツ番組では、毎週同じメンツが同じことを言っているよね、そんな感じだよ。ZoSeaは、サーフィンをアマチュアなものではなく、メジャーかつプロフェッショナルなものにしていきたいのさ。

選手の数や、イベントの構成はとりあえず同じなのかな?
その通り。ただ恐らく、2つか3つの特別イベントがASPツアーに加わってくると思う。それはエディかもしれないし、オールスターみたいなイメージのものかもしれないし、全く新しいタイプのイベントかもしれない。NASCAR(アメリカのカーレース)がレギュラーイベントを持ち、一方でシーズンの最中にオールスターイベントをやるみたいな感じかな。ワールドツアーそのものの構造は、上手くいってるから変える予定はない。ワールドツアーでチャンピオンを決める。ただ今後数年間はちょっとした変更があるかもしれないね。とても選手達が賛成するとは思えないけど、32人の選手を24人にするとかね。
ZoSeaはメンズの賞金を50万ドルに、ウィメンの賞金を25万ドルに引き上げることを約束してる。選手達の利益に直接つながるわけだけど、それにはテリー・ハーディー(ケリーのマネージャー)の影響があると思う。「ヘイ、選手達の給料は安すぎる。彼らはもっと市場価値があるんだ。50万と年金を準備して、彼らに、ただのサーファーじゃなくて、アスリートなんだと自覚してもらおうぜ」みたいな感じで言ったんじゃないのかな。

キーラン・ペロウが、新しい理事局が必要になるだろうと言っていたけど、それはどういうこと?
選手達が選ぶ代表者のことだね。その代表者が選手とZoSeaの橋渡し役になる。例えば、選手達がショーン・トムソンを選んだとしよう。そうすると選手達は賞金やルールの要望を彼に伝え、僕みたいなイベント側の人間も、カメラの数とか運営上の問題を彼に伝えることになる。ショーン・トムソンはそういった要望を集めて、それを実現するためにZoSea側と交渉するんだ。現実的に考えると、マイク・パーソンズみたいな人間、いや、キーランもあり得るね。彼は今シーズンで引退の可能性もあるし、彼が代表者になるとしたら完璧だよ。サーフィンのことは何でも知ってるし、周りから尊敬されているし、選手側とイベント運営側と上手くやれる。

現状、プロサーフィンにおいて本当のリーダーはいないね。
そう、いないんだよ。それがこのタイミングが適切だという、もう一つの理由でもある。ASPは、財政上の理由からブロディ(ASPの前CEO)の抜けた穴を埋めなかった。新しいCEOを迎えて給料を払ったら、赤字になっちゃうからね。 CEOの不在が、この話を進めるのを簡単にしたと思うよ。

ZoSeaの背景にあるものは何だろうー 何が彼らの目的なのかなー
彼らはサーフィンを他と違うスポーツだと認識していて、新たに一から築き上げるのは難しいと思っているから、ASPを運営するスタッフや組織はそのままにするつもりなんだ。彼らがしたいのは、組織をコントロールできる立場になって、収益を上げること。彼らはコンテストを運営したいわけじゃないし、サーファーと関わりたいわけでも、技術的な問題に口を出したいわけでもない。放送権やスポンサー枠、広告枠を、収益を上げる道具と見てるのさ。彼らはそれでお金を稼げると確信しているし、そうなれば自然と選手達の知名度も上がり、サーフィン自体の地位も向上する。サーフィンは常にマイナーなスポーツだったけど、ZoSeaはそれを変えたいのさ。
サーフィンに関わる人自体が限られるから、ゴルフとかテニスみたいにはならないと思うけど、正当な観点から、ZoSeaはこのスポーツの地位を上げようとしている。それは間違いない。彼らは、ケリーみたいな有名選手にスポットを当てて伝説化し、サーフィン業界の枠を超えさせようとしてる。ごく普通の人達が、彼の名前を知り、彼が素晴らしいアスリートだったことを知るようになるはずだよ。

この件がサーフィンそのものを変えると思う?
いや、サーフィンの根幹は変わらないよ。トリプルクラウンが終わったら、僕はいつものように沖に出て、サンセットでサーフィンするのさ。根幹は変わらないけど、この件は、サーフィンをもっと多く人が楽しめるものにすると思う。プロサーフィンに関わる人達は、より成功に近づきやすくなるはずだ。サーファーはもっとお金をもらえるだろうし、ブランドはもっと多くのボードショーツを売れる。このスポーツの信頼性も増すだろう。ケリーは、人とは違うライフスタイルを過ごすただの人ではなく、リアルなアスリートとして見られるようになる。ジョンジョンみたいな才能ある若者は、何年後かには気鋭の若手アスリートとして認知されるかもしれない。トップ・サーファー達をマイケル・ジョーダンやタイガー・ウッズみたいな存在にするべく、ZoSeaはチャレンジするつもりなのさ。それを悪いことだとは思わないし、このスポーツの発展の助けになるはずだよ。このタイミングは正しいと思うね。

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