サニー・ガルシア インタビュー

サニー・ガルシア インタビュー

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力強く、誇り高く、本物。これらの全ての言葉は、サニー・ガルシアにぴったり当てはまる。元ASP世界チャンピオンとして、6回のトリプルクラウン優勝者として、サーフィンの歴史におけるサニー・ガルシアの地位は揺るぎない。彼はハワイのベスト・サーファー達、ラリー・バートルマン、デーン・ケアロハ、ホー、アイアンズ兄弟のようなサーファーの中の一人だ。ノースショアにおける攻撃的でありながら優雅にも見えるアタックは、称賛とともに語り継がれるはずだ。だが、ちょっと待てよ、そういえば彼のキャリアはまだ終わってないんだ。そしてそれは、今シーズンのハワイのノースショアシーズンのスタートイベントともいえる、サンセットで行われたHICプロで20年ぶりの優勝を果たしたことで証明された。
サニーはこの後のトリプルクラウンに向けて、幸先のいいスタートを切った。

僕らがサニーに会ったのは、ニカラグアのジャングルにあるホテルの中庭だ。その2日前には、ISAワールドマスターズで個人、団体ともに優勝をしていた。
この優勝には、賞金もASPにつながるポイントもないが、彼はそれを楽しんでいるようだった。ビーチではファンや他のチームと一緒に写真を撮り、海ではバレルを自在に抜けて、その実力をプレヤ・コロラド(大会開催地)のサーファーに見せつけていた。身体も鍛え直して、まるでティーンエイジャーのようにサーフィンを楽しんでいた。

彼に関しては、賛否両論だろう。脱税問題、自宅での逮捕、ゴールドコーストでの乱闘など、大会における成績よりもゴシップで注目されることが多かった。しかし今彼は、格闘家のように引き締まった体で、再びコンペティションの世界へ挑戦を始めようとしている。

大会に出る事は、君にとって大切なことー
俺にとっては、そんなに重要なことじゃない。そこまでモチベーションは高くないって自分に言い続けてきたんだけど、究極を言ってしまえば、やっぱり負けず嫌いなんだよ。誰にも、何事にも負けたくない。もっと落ち着いて、ゆっくりやるべきだってことはわかってるけど。
どうなんだろう、よくわからないな。今年は1月から15キロぐらい体重を落としてきているから、昔に戻ったような感覚で調子がいい。来年はWQSに戻ってもう一度やってみるつもりでいるけど、今年のISAでの経験も貴重だと思ってるよ。

今のコンペサーフィンの組織運営に関してはどう思うー
イベント中に話してたことなんだけど、このISAのイベントは素晴らしい。その点は考えさせられるね。ISAの大会はクイックシルバーやリップカール、ビラボンなんかのビッグブランドで運営されているわけじゃないし、ASPも絡んでこない。スポンサー達にとって大会は結局メシの種だからね。彼らと話していると、それはクイックシルバーにとっていいけど、ビラボンにとっては良くない、だからリップカールにとっても良くないとか、いつも利害がぶつかり合う。それに加えて、サーファー達はやりたいようにやりたいわけで、利害関係がより複雑になるから、政治的な要素もたくさん出てくる。
スポンサーがビジネスの世界で生きていて、彼らのビジネスにとってベストなものを追求せざるを得ないということは理解しているけど、ISAのプログラムでは、スポンサーではなくISAが大会を運営するから、全てがスムーズに進む。言っておくけど、俺はASPを信じているし、俺自身がASPの商品でもあるし、そういった仕組みに俺自身が手を貸してきた。そこには本当に多くのいい奴らがいて、もっと良くしていこうという思いがあることは確かだけど、一方で自分の利益しか考えてない奴らもたくさんいるってことは言える。それがプロフェッショナル・サーフィンの価値を傷つけていると思うね。

パフォーマンスという点ではどうー
ASPにいるのは超一流の奴らばかり。みんながそこに行きたいと思っているし、みんなが一番になりたいと思ってる。才能を発揮し始めた何人かの素晴らしいキッズもいる。ガブリエル・メディーナにジョンジョン・フローレンス、そういったグループがこれからのサーフィン界を長い間になって行くだろうね。

デーンのように、ツアーから距離を置くサーファーについてどう思うー フリーサーファーやフリーサーフィンの役割って何だろうー
フリーサーフィンは長い間大きな役割を果たして来たと思う。昔はジョニーボーイ・ゴメスがいただろうー 彼は素晴らしいコンペティターだったし、ハワイのイベントでは本当に凄かったけど、大抵はサーフトリップに行っててさ、フリーサーファーとしての地位を確立してた。彼の後はマーゴ、ラスタと来て、今はデーンという流れになってるけど、素晴らしいサーフィンをするなら、それ自体が評価されるべきだと思うね。最近の雑誌じゃ、カメラマン達とボートトリップに行って、良い波で写真やビデオを残すっていうサーフトリップがメインになってる。他の選択肢があるってことは良い事だろうー デーンはなろうと思えばワールドチャンプになれるけど、明らかに彼の気持ちはそこにない。さっき言ったようにASPはちょっとゴタゴタしてるから、サーファーもどうしたいのかわからなくなってきてるのさ。だかデーンのあの感じ、「わかってるでしょー それは僕の欲しいものじゃないんだ。それははっきりしてるんだよ。僕はやりたいことをやるつもり」、って姿勢が俺は結構好きだね。スポンサーや周りが色々言ってるだろうに、それでも自分自身の奥深くを見つめて、自分が本当に欲しいものは何なのか、その為に何を捨てなきゃいけないのか決めるのは大変なことだぜ。特に才能のある奴にとっては。

ハワイとハワイ出身の選手は、常にサーフィンシーンで大きい役割を果たしてきたわけだけど、最近も面白い才能がどんどん出てきてるよね。彼らについてどう思うー
ジョンジョン、キアヌ・エジン、イズキール・ラウ、カイ・バーガー……なんでこんなに揃ってるんだってくらいいるよ。いつの時代もハワイのそれぞれの島から何人か出てくる。オアフ島出身の奴らが何人かいて、マウイから出てくる奴らもたくさんいるし、アイアンズ兄弟みたいにカウアイから出てくるやつもいる。まるで振り分けたみたいに、それぞれの島から1人か2人の素晴らしいキッズが出てくるんだ。ジョンジョンより若い世代、キアヌ達の世代でさえそれが当てはまる。NSSAはハワイのキッズが上位を独占してるし、USチャンピオンシップもそう。コーチ陣も素晴らしくて、レイノス・ヘイズやバート・イシマル、マイク・ラトロニックと人材が揃ってる。ハワイのサーフシーンはかなり上手くいっているな。
ただ、最近のキッズはお金をもらいすぎてて、それが彼らに大きすぎるプレッシャーを与えてる。もし彼らが2、3年間の間に芽が出なかった場合、スポンサーはすぐ契約を打ち切る。皆がアスリートとして他から必要とされていたいわけだけど、もしスポンサーがそれを認めてくれなかったら、彼らは何をしたらわからないし、どう挽回すればいいかもわからない。あまり早いうちから色々与えすぎない方がいい。
何人かのハワイの若いサーファーは、ハワイを出て行こうとしているけど、なぜかなー
多くの人はそれについて話したくないと思うけど、正直な話、ハワイでは若い世代のドラッグ問題が深刻なんだ。俺は今まで、何人もの才能ある友達、例えばニッキー・ウッドやシェーン・ヘリングなんかがドラッグによってダメになっていくのを見てきた。そういうのを見るのは凄く悲しいことだよ。それ以外の理由としては、ハワイではスポンサーを見つけるのが難しいことが挙げられる。今、俺はカリフォルニアに住んでいるから、クイックシルバーやビラボンにスポンサーされてる子供達をよく見るんだが、そういうブランドがカリフォルニアにあるからなんだ。もし南カリフォルニアに住んでいなくて、しかも目立つ存在でなかったら、スポンサーを見つけて試合を転戦するためには相当特別なことをやってのけなきゃならない。冬のハワイでサーフするだけで大会に出場しないハワイのキッズ達は、スポンサーもつかず、実力を見せつける機会もないのさ。

次にワールドチャンプになるのはどのハワイアンかなー
ジョンジョンは今年かなり上手くやってるし、彼が一番近いところにいると思う。落ち着いているし、頭も良い。彼のお母さんはかなり熱心で、いつもそばにいて心配ばかりしてるんだけど、彼自身はあまり気にしていないみたいだな。彼は単純にサーフィンが好きで、ようやくゴールに向けて本格発進した感じだ。他の奴らと同じように、ちょっと難しい時期もあったけど、この2年間を見る限りそれも乗り越えたように見える。彼がケリーを倒すのを期待してるよ。

これからのサーフシーンはどうなっていくと思う?
80年代のサーフィンも凄かったけど、90年代にはそれがメインストリームと言えるまでになった。今はインターネットやテレビでさらに人気が出ているけど、80年代に戻っているような気もするな。80年代のOPプロでは10万人がビーチにいたんだぜ。サーフィンはどんどんメジャーになってきていて、それがイベントの観客を増やしてる。そうやって時代が繰り返すのを見ると嬉しくなるね。業界全てが上手く回って、サーフィンをより楽しめるものしてくれることを願うよ。後ろ向きなネット上の意見は嫌いなんだ。俺がオリンピック種目としてのサーフィンについてツイッターでつぶやくと、何人かが「それはいいね、海が混雑して嬉しい限り」なんて皮肉を言ってくるんだけど、サーフィン自体が素晴らしいことなんだよ。コンペティターであろうとフリーサーファーであろうと、海に入れば面倒な事全てを水に流して楽しめる。みんながそうやって楽しむことが一番だと思うよ。

若いサーファー達に教えてあげられることはあるかなー
意外とたくさんある。ワールドチャンプになる前は、自分のことをベストサーファーのひとりだと感じていたけど、ワールドチャンプになった年は、自分こそがベストだと感じていた。実際はそうじゃなかったかもしれないけど、少なくとも自分ではそう感じてた。自分がベストだと信じれなければ、絶対にそこに到達することは出来ない、ってコーチしているキッズ達にはよく言うんだ。去年の冬は少しの間カリッサ・ムーアをサポートしてたんだけど、同じように「俺はお前が一番だと信じている。だから今年お前がしなきゃいけないのは、信じる事だ。信じれば、お前を止めるものは何もない」と伝えて、彼女はワールドタイトルを取った。俺はメンタルが一番重要だと思う。メンタルは味方になる時もあれば、敵になることもある。自分の精神状態がクリアで、やっている事を自覚し、自分を信じることが出来れば、何だってできる。自分の歩みを止めることができるのは、自分だけだろうー 他の何かが自分を止めるわけじゃない。トライし続ける限り、失敗なんてないんだよ。

君はあまり話したくないだろうけど、ここ何年かはいくつかのゴシップ、特にゴールドコーストで、ジェレミー・フローレスと一緒にローカルをビーチから叩き出した事件があるけど、そういった経験から学んだことはあるー
そういった事件はもう過去の事だし、俺にできるのは、起こってしまった事は起こってしまった事として前に進むことだけさ。それしか言えない。

落ち着いてフレンドリーになった印象があるけど、私生活で何か変化はあったのー
いや、別に。大抵の人がわかってないんだけど、これが俺なんだよ。そりゃASPのイベントではプロとして勝つためにガツガツするさ。だけど、ここではプライドだけでお金は絡んでこないから、競争はあるといってもそれほどじゃない。みんなサーフィンがしたいからここにいて、規則の通りに上手くやってる。邪魔する奴らもいないし、ただサーフィンに集中すればいい。国の代表としてサーフィンして、素晴らしい時間を過ごせばいい。ここにいる間楽しめないようじゃ、どうかしてるよ。

どうやって鍛え直したのー 何かやってるー
ダイエットしてるわけじゃないけど、食べる物には気をつけるようにしてる。ペドロズっていうメキシカンレストランが大好きで、週3回はそこでチーズとか豆とかブリトーを食べてしまうんだけど、それ以外はサラダ、魚、米なんかを食べるようにして、肉の量も減らしてる。あとは家のガレージのマシンで毎朝10キロくらい走って、気分が乗る時は夜も同じだけ走ったりする。ウエイトトレーニングも少しするかな。最近ダートバイクもまた本格的にやり始めてて、楽しくやってるよ。サーフィンする時は、アッパー・トラッスルズまで歩いて行ってるんだ。特に波が良い時は早く歩くから、いい運動になる。ボードラック付きの自転車が欲しいなと思うこともあるけど、アッパーに行くまでの道の雰囲気はかなりメロウで、そこを通るみんなが楽しそうだからさ、今のところ歩いて行くのを楽しんでるよ。ロウワー(トラッスルズはロウワー(南より)とアッパー(北より)がある)はローカリズムが強くて色々面倒だからちょっと距離を置いていて、コンディションがイマイチの時しか行かない。トラッスルズではあまりトラブルも起こしてないし、いつも楽しくやってるんだけど、面倒なやつも何人かいるんだよ。

ソーシャルメディア、特にツイッターを結構やってるよねー
ああ、他のみんなと同じように楽しんでる。俺にちょっかい出してくる奴を捕まえて、「ぶん殴ってやる」「やってみろよ」みたいなやりとりを楽しんでるよ。3、4人がつるんで俺につっかかって来てたんだけど、それを毎回相手にしてやり返してたら、いつの間にか俺のファンになってた。親父はいつも俺に「やる時はやさしく殺してやれ」って言ってたんだけど、まさに最近それを実行してて、これが結構上手く行くんだよ。俺は俺だし、それは揺るがないけど、もし間違ってたら素直に認めるし、謝ることに抵抗はないよ。

サニー・ガルシアにとって、次の目標は何ー
別にないって。本当にやりたい事を見つけるだけ。ずっとサーフトリップばかりで、大会には出たくないって言い続けてきたけど、今、どうしたことか大会が楽しいと思える。ISAマスターズでここに来て、エアーをしない同世代の奴ら(笑)とやるのは楽しい。エアー無しじゃやっていけないことはわかっているけど、こうやって大会に戻ってくるのは悪くないね。

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