オウエン・ライト インタビュー

オウエン・ライト インタビュー

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ケリーの11度目のタイトルを今年阻止できる者はいないとおもいきや、どこからともなく痩せ細った弱冠19歳のオージーが現れケリーの前に立ちはだかるではないか。しかも本気サイズのチョープーでだ!

オウエン・ライトは、3試合連続してケリーとファイナルを戦った。こんなことはASPでも初めてのことだし、うち2回はケリーが勝っているのだが、最も高額な小切手は(ニューヨークでの30万ドル)、なんとツアー2年目の新参者がかっさらっていった。それよりさらに重要なのは、まだプロキャリアが始まったばかりのオウエンが、もうすでに立派にタイトル争いを演じていることだ。

ハーレープロで2位になった直後、サンクレメンテでオウエンをつかまえて、6フィート3インチの長身のタイトル候補がいまどのような精神状態にあるかをインタビューしてみた。

初優勝はどうでしたー 期待してた通りでしたかー

グロムだったころの僕のワールドツアーでの優勝のイメージとは違ってたね。優勝ってのは凄いことで、優勝した翌日も自分はずば抜けたサーフィンをする無敵なイメージを描いてたんだけど、チョープーでファイナルに進出し、ニューヨークで優勝を遂げたあと、イメージしてたような世界一偉大なサーファーって感じじゃないことに気付いたんだ。
だって翌週には、ラウンド1からまたはじめなきゃならないから、あっという間に優勝のことは忘れちゃうしね。とっても短かかったけど、その1分1秒を大切にしたよ。
ニューヨークでのファイナルで戦ってたとき、なんだか心の中があったかくなってきて、僕の家族の存在が近くに感じられた。みんな喜んでくれてるような……うまく説明できないんだけど、彼らがそこにいて、僕が楽しんでるように彼らも同じくらいあの瞬間をエンジョイしてくれてるような気がしたんだ。

今年はじめの4試合は、13位とクオーターという結果で終わってるけど、ここにきて3回立て続けにファイナルをメイクしたね。なにが変わったんだろう?

去年の終わりにいくつかいい結果をだし、その後、ちょっと休憩をもらった。怪我をしたり、プライベートな悩みとかあったから。だから、どこかいい所へ逃避したかったんだ。で、インドネシアに仲間たちと行ってみた。そこで、初心に戻れた。サーフィンについても考えさせられたし、ただ単にサーフィンする行為がどれだけ楽しいか、ってことも久しぶりに思い出した。
試合に夢中になりすぎてたのかもしれないね。だから、サーフィンの他の面をエンジョイしたいとおもったんだ。そして、チョープーに着いてみると、コンペがすごい楽しいんだ。あれ以来ずっとそんな感じさ。なにか一つ変わったことをあげるとしたら、もう1年目じゃないってこと。本気になってタイトルを狙うときがきたんだよ。

ルーキーの年はお父さんとツアーを回ったんだよね。今年は誰と回ってるのー

今年は、ライヤン・フレッチャーっていうリップカールのチームマネージャーとが多いな。それに僕のコーチであるディーン・デイヴィスかな。2年前に知り合って、それ以来ずっと話し相手になってもらってる。彼はものすごくいいアイデアをもってて、いろんなことで助けになってる。うちの家族は大家族だし、父はそっちのケアほうが忙しいから、僕も21歳になったんだし、ここで独り立ちするか、ってことになったわけ。コーチとフレッチと自分っていう、小さいけど立派な僕のチームだよ。
コーチは栄養管理から肉体的健康に関することまで全てやってくれる。彼はダウンヒルの自転車レーサーで、サーフィンはまったくやったことがない。だから、けっこう違う視点からの意見が新鮮でいいんだ。それと、いちばんいいのはサーフィンに洗脳されてないところ。彼自身、世界チャンピオンだから、最も高度なレベルでのコンペティションに必要なものとかに理解があるんだ。

インドネシアでの怪我についておしえて。

あれは僕にとって転機だったのかもしれないな。ジェフリーズベイの前からのことなんだけど、ジェフリーズに行くまえ6週間サーフィンしなかったんだ。足首を骨折したからね。あのイベントが終わったあと、翌日にはインドネシアに向かってた。異常にサーフィンしたくて、地元の仲間ら数人だけを連れてインドネシアに向かった。そこで最高の時を過ごせて、サーフボードの調整もできた。で、2週間のステイの最後のほうになると、かなりハードに突っ込むようになっていた。慣れてくると、自信過剰になるんだね。そしたら、突然、ガーンってやられちゃった。頭からリーフに突っ込んでしまったんだ。
だれか傷口を縫ってくれる人はいないかって探しまわったんだけど、見つけた病院のベッドに血がついててさ、さらに友達が血がついてる針を見つけて、「うそでしょ、さようなら~」って出てきちゃったよ。次の病院で縫ってもらったんだけど、綺麗に消毒してくれてなかったんだろうね。その晩は入院したんだけど、翌日になってみたら僕の顔はぱんぱんに膨れ上がってて、どうやら感染しちゃったらしいんだ。縫ったから、膿んだ部分が封じ込まれたような状態になったらしい。やむなくフェリーでバリに戻って病院に行った。糸をぜんぶ取り除いて、なかのものを綺麗さっぱり出した。たいへんなことになると思ったんだろうね、オーストラリアに帰されちゃったよ。家にもどってくると強烈な抗生物質があったんで、無事治すことができたんだけど。8日間家にいて、それでタヒチに出発したんだ。

チョープーの波の予報を聞いて、ナーバスになりました?

いや、チョー興奮してたさ。ザ・デイがどこまで大きくなるかは、すこし気になったけどね。どでかいチョープーは以前見たことあるから、「あんなのに乗ってみたい」って感じで軽く思ってたんだけど、やってきた波はいままでに見たこともないような波だった。ありゃ、怪物だよ。でも、その次の日は最高のコンディションになって、みんなどでかいバレルにプルインしてたよ。ものすごいチャージをみせてるんだけど、時にはひるんじゃうような巨大なセットがはいってきちゃったりしてヤバイんだけど、それでも突っ込んでた。あんなのを実際に見れてすごく嬉しいよ。みんな、自分の限界にチャレンジしてたね。

巨大なチョープーからニューヨークやローワーズといった違ったタイプのロケーションに合わせていくっていうのは、どんなもんなんでしょう?

ああいうのは困る。チョープーがあまりにも神秘的だったんで、そのあとのニューヨークでしょー ビーチに着いて海を見渡したら、波が無いんだ。だから、サーフィンしないで3日間都会で遊ぶことにした。イベントが始まっても、僕のラウンドワンのヒートはとても波が小さかった。モチベーションを高めていくのが難しかったね。とくにチョープーのあとじゃ、やる気になれないよ。
それで、お次は、トラッスルズに。トラッスルズは完璧な波だから、意外とパワーがあって波が押してくれる。でも、初日は小さかったなぁ。そのあと腰から肩ぐらいのサイズになってきたら、かっ飛べるようになった。でも、いつだって波が大きいほうがサーフィンしやすいよ。

ワールドタイトルは考えてるー

もちろん。いつだってワールドタイトルが欲しかったし、この状況に憧れてきた。ただ、今年そのチャンスが来るとは夢にもおもわなかったけどね。でも、このチャレンジを受けて立つ覚悟はできてる。いつも夢みてたことだから。こんなチャンスは滅多に無いんだから、やるつもりさ。実は、かなり燃えてるんだ。
2位という位置にいることと、ファイナルを何度か経験できたし。ケリーとは、3回ファイナルを争った。彼から学ぶことは多かったよ。だって、彼は70回ぐらいファイナルを経験してるんだからね(笑)。だから、彼はファイナルをどう攻めるべきかをよく理解してるよ。

オーエンは10回ケリーと対戦してるけど、うち4回彼を負かしてるよ。ケリーと戦って学んだことってなにー

それは、彼に勝つには、こてんぱんにやっつけないといけないってこと。彼は超一流だから、どんな時になにを仕掛けたらいいかを分かってるんだ。何をしたらいいかをしっかり把握できてて、僕はそれを把握しようと今頑張ってるところ。だから、彼と戦うことはとっても為になるんだ。

ワイルカードとして何度かケリーと対戦してるよね。なにも失うものがないワイルドカードとして戦うのと、タイトル争いを彼と競いながら戦うのじゃ、やはり違うのかな?

そうだね、違うよ。やる気が違う。何を失うものがないんじゃなくて、かなり失うものが多いからさ。だから、勝つ動機は計り知れないぐらい大きい。それはべつに悪いことじゃないと思う。モチベーションが増すっていうのは、いいことさ。

ケリー相手にファイナルを戦うには、どんな下準備が必要なのー

最近の3つのファイナルを考えてみたら、ワールドツアーで戦ったことあるファイナルって全部ケリーとなんだ。だから、ほかとどう違うかはわからない。よって、ファイナルに向けて必要と思われることは、ちゃんと全部やる。一度はそれが報われ、その他の2回は報われなかった。ただ、その2回もかなりいい線いってたと思うんだ。
ヘッドフォンをつけて音楽を聴くでしょ。いい状態に自分を高めてから沖に向かう。ヒートが始まったら、すべてが動き出す。自分のところにくる波に乗ってさえいれば、いつか終わりが来る。トラッスルズでは、そんな感じだった。僕が波をとらえ、彼もとらえて、彼が優勝した。

あなたはケリーをライバルとしてみてますかー ケリーはどうでしょうー

海のなかでは、コンペティションのライバルだよね。でも、陸上では、友達さ。話すし、まったく気まずいこととかないし。でも、沖にいるときは、彼はまったく隙をみせないし、僕もそう。お互いベストを尽くしてる。だから、僕にとっては、ライバルというのは、そういうもの。僕らが海のなかにいるときといったら競争心丸出しだよ。多くの人がケリーは陸の上では心理戦とかを使ってくるなんて言うけど、僕にそんなことしてるようには思えないんだけどな。

ケリーを本気にさせるものをあなたは持ってる…みたいなことを他の選手に言われたことあるー

彼に勝てって熱烈に応援してくれる選手は何人かいるね。ニューヨークではとくにオージーの選手たちが喜んでくれたし。みんな僕のことを励ましてくれた。ケリーが絡んだタイトル争いで最初のワールドタイトルをとれたら、どれだけすごいか。先週のファイナルでケリーと一緒になれたのも、よかった。2連敗にならなくて本当によかった。でも、3回ファイナルで一緒になって2対1だもんな。せめてタイに持ち込みたいから、もうひとつ勝てたら最高だね。

今年はスラブ・グラブをよく使ってるけど、ニューヨークやトラッスルズでは高得点に結びついたけど、ブラジルでは評価されなかったね。こういうテクニックは、どう採点されるべきだと思いますかー

スラブ・グラブは難易度の高い技の一つだよね。やってる選手はあまりいないし、けっこう自分はこれを使うんだ。でも、インディーとかダブルグラブでも、同等のスコアが付くんじゃないかって思うときもある。ブラジルでは、日常的なエアーって感じで見過ごされてたのは確かだね。スラブを試して失敗する人って多いでしょ。僕は好きなんだな。やってて自分に合ったグラブだとおもってる。高く上がっていってあのレールをつかむ感覚が好きなんだ。真っ直ぐ飛ぶと、とっても滑らかなエアーに感じる。それをエアーリバースに持っていっても、同じこと。ジャッジが気に入るときもあれば、気に入らないときもある。

いま、自信は、どのくらいありますー

かなり今の自分は自信があるね。3回ファイナルに進出し、このポジションにつけたんだからね。次の試合が待ち遠しいし、自分の実力に疑問を感じたりはまったくしてない。

背が高いということはいいことー それとも欠点ー

1フィートの波では完全なる弱点だよ(笑)。ニューヨークでのラウンド1で、それははっきりしたでしょ、いきなり負けたから。その次のローワーズでは、やっとのことでラウンド1をクリアできたよ。あの時は、ついてた。サイズが上がってきたら、自分の高い身長を利用して大き目の波に乗る術を習得してる。ターンをするとき、ほら、そこに長さがあるから、早めに蹴りだせるんだよね。でも、ときには身体が長すぎると、見栄えが悪いときもある。こっちの腕があっちに行き、こっちの脚がそっちに行きってバラバラになったときなんかね。だから良くもあるし、悪いときもあるってことだね。

いま自分のサーフィンに足りない部分って、なにー

上達しなくてはいけない部分っていうのは常にあるもの。チッパ・ウィルソンがやってるようなスケートからくるトリックなんかは、めちゃくちゃカッコいいよね。それにジョシュ・カー、彼も発明家だよ。そっち側の部分は、足りないってわけじゃないけど、向上の余地ありかもね。
ヴァリアルを試してるけど、フリーサーフしてる時間が今年は全然とれないんだ。だから、フランスは試合が始まる1週間前に現地入りして、ビーチブレイクに慣れ、どでかいエアーとかフリップなんかも練習してヴァリアル系のトリックも試そうとおもってる。だから、今回はフランス行きが楽しみでしょうがない。派手なヴァリアルを一発決めただけでヒートアップできるんだから、大きいよ。現時点では、ジャッジはあれが好きみたいだな。

シーズンが終了するまで、どのようにして今の勢いをキープしていくつもりでしょうー

ニューヨークのあと、作戦を練り直す必要があった。優勝したあとって結果を残すのが意外と難しいものなんだ。それでも勢いをキープするには、ワールドタイトルを獲るんだっていうモチベーションを強くもつことだよね。ケリーの結果をみれば、それがわかるでしょ。1試合コンテストを欠席してしまったことをものすごく悔やんでたら、バンバン勝ちだしちゃって、あと何試合勝つつもりなのー って感じでしょ。僕もそういうのを使ってこの勢いを維持していくんだ。

ワールドチャンプになるには、どうしたらいいのでしょう?

ワールドチャンピオンになるには、ケリーに勝たなくてはいけないと思う。なぜならば、彼を倒せる選手がいないときは、必ず彼がチャンピオンになってしまうような気がするから。相当な集中力がいるだろうけどね。わかんないよ。なるようにしかならないんだから、やってみるよ。勝つためには、できることはなんでもやるさ。

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