F+編集長
スプレーマニアPart2
スプレーをマニアックに追うとそのサーフィンの本質がわかる、と前回のスプレーマニアPart1でお話ししたけど、じゃ、具体的にはどこをどう見るの? がPart2。
まずはその大きさ。スプレーが大きければ大きいほどサーフボードがたくさんの水を押し出しているといことになるのだけど、大きいからいいってものでもない。スプレーがたくさん飛んでる方がいい、という判断は、とても分かりやすいし、最初はそこで判断ということになるのだろうけど、実は大きなスプレーにはもうひとつ奥があって、どういう風に飛んでいるかのほうにその動きの本質が見える。
そしてスプレーの大きさというのはそこまでのスピードをどう急激に止めたかにも影響されるので、スピードと急ブレーキもスプレーの大きさの要素となる。
例えば大きくても裏が透けて見えるような薄いものであれば、それは、波の部分の水量の少ないところ、つまりトップに近い部分の抵抗の少ないところでクリッと素早く蹴り回した結果だ。
逆に真っ白で裏が見えないような分厚いスプレーは、同じリップでもちょっと下のほうの水量が多い波の部分でテールを押し込み(ここ大事、あくまで蹴らない)、ビーチに向かう波のパワーとボードの浮力VS脚力の戦いで、負ければ弾き飛ばされ、勝てれば分厚く大きなスプレーが飛ぶ。急ブレーキを波のどの部分でかけるかによってもスプレーは変わり、前からブレイクしてくる波に合わてタイミングを取ることでロールイン、レイバックなど、技が分化していく。
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スプレーマニアPart1
ようやく秋らしいというか、酷暑を耐え抜き、何とか息継ぎのできる気候になってきた。とはいえ、あと1週間で10月というこの時期としては、まだまだ例年より暑いかなぁ、と思う。そうはいってもあと3か月で今年も終わっちゃうわけで、つべこべ言っててもカレンダー制作の締め切りはやってくる。パイプ、ベルズ、バーレーヘッズ、ポルトガル、Jベイ……世界各地でのCT選手たちのライディングを何度も見くらべて選ぶ作業は、楽しいけど、難しい。12か月分、できれば同じアクションにならないようにとか、水の色の変化とか、いろんな条件をかいくぐって選ばれていくけど、まぁ、最終的には個人の好みだったりしてしまうので、皆さんも同じように楽しんでくれればいいかな、と思う。
今回のチョイステーマは新しいライン、新しい攻めとかかなぁ。前回のコラムで世の親御さんがたに、もっと勉強を、と言った手前、今世界で何が起きているのかを知っていただくためにも、1か月間1枚の写真を眺めるカレンダーは、細かな気づきをもたらすものがいいかなぁ、と考えた次第。
サーフィンの良しあしを判断するうえで、ひとつのわかりやすい指標としてスプレー(サーフボードの動きに伴って飛ぶ水しぶき)がある。このスプレーに関しては動画より写真のほうがずっと雄弁に様々なことを語る。静止画像はごまかしがきかないのだ。
ディテールの差が大きくそのサーフィンの質に影響するので、写真で様々なことをチェックするのは正しいと思う。人間の動体視力には限度があるから。
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サーフィンを頑張るお子様をお持ちの親御様へ
毎年8月に志田で行われるNAMINORI甲子園を、毎年1回は日本の若手というか子供の現状を見ておこう、みたいな気持ちでお手伝いしている。小中高の各選手のサーフィンもみているけど、シーンの雰囲気とか、その年齢層の日本での現状とか、そういったものを見るには全日本選手権とかそういった大仰なものではなくて、こういう草レースではないけど、それ的な幅広い選手層の試合のほうがよく見える。若くしてプロ公認を得た選手も参加していて、まぁ、日本の近未来はここから見えると言ってもいいと思う。
今や何級とかだけではなく、小学生からランキングがつけられたりして、子供同士、親同士のものすごいマウントの取り合い、みたいなことになっていることは想像に難くない。でもはっきり言ってそれ、時間の無駄だと私は思う。そのランキングが、例えばテニスや卓球のように、ジャッジの私感が入らない、ボールが返らなければ負け、みたいに明確に白黒がつくものであればまだいいと思うけど、演技競技の人間による採点には必ずグレーゾーンがあり、それで決まったランキングが実力とは言えないし、だからこそ本人も両親も負ければブーイングということになる。ジャッジへのブーイングに利益は無い。ま、ジャッジがイケてないから、と言ってしまうのは簡単だし、実際にそういうこともあるかもしれない。でも、そういうジャッジのいるところでやってるんだから、それに合わせるしかないわけで、ジャッジがイケてないと思うなら、そこでやらなければいいだけだし、そこで勝ちたいならそこのジャッジが好きなサーフィンを目指せばいい。何度も書いているけど、試合というのはその日そこにいた選手の中で、その日のコンディションで、その日のジャッジ好みのサーフィンをしたものが勝つ、というだけのことであって、それが才能とか実力とか将来性とか、そういうことにはあまり関係ないので、結果やランキングでマウント取りのような子供じみたことはしないほうがステキだと思う。
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男女ともにトップのイエローが2025ワールドチャンピオンになった
最後のファイナルファイブ(できれば史上最後にしてほしい)も無事終了。男女ともにトップのイエローが2025ワールドチャンピオンになって、めでたしめでたし。
メンズはヤゴ・ドラ、ウイメンズはモーリー・ピックラム。まぁ、どちらも通年安定していたと思うし、ここ数年でしっかり実力をつけた選手だと思うので、順当だろうと思う。
まぁ、なんだろ、ジョーディとかヤゴと一緒にクラウドブレイク入れると、グリフィンの軽さのようなものが気になったかも。サーフィンが軽い選手ではないと思うし、それが気になったこともないんだけど、なんか今回はちょっとそこがひっかかったかな。まぁ、グリフィンがワールドナンバー2というのは納得ではあるし、近いうちに必ずタイトルが取れる選手ではあると思うけど。
ヤゴは究極のオールラウンドコンペティターに成長した。エアーよし、バレルよし、マニューバーよし、ビッグウエイブよし、スモールウエイブよし……あー、これヤゴダメでしょ、みたいなコンディションが思い浮かばない。これってすごいことだと思う。進化型ガブリエル・メディーナ。
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子供たちをお山の大将サーファーにさせないために
今週(2025年8月28日、29日)は「第6回NAMINORI甲子園」という志田で行われる高校生以下の大会にかかりっきりで、ファイナルファイブどころではない(笑)。遠くのファイナルファイブより、目の前の日本の子供たち……なんだろうか??
近年の世界的なシーンの若年化を考えると、まぁ、このNAMINORI甲子園の出場者たちの年齢で世界レベルを戦っているわけで、そう思うとう~ん、となってしまうけど、私は14歳でCSのトップにいるより、14歳で普通に学校行って友達がいて、部活頑張ってます、のほうがずっと正常で正しいと思うし、サーフィンを遊びの一環としてとらえてのびのびやってるほうがいいかなぁ、と思う。
遊びでサーフィンしてたって、高校卒業してから目覚めて、正しいものを見て、正しいやり方を見つけて、懸命に努力すれば、世界で戦える。何も小学生から世界を目指さなくたっていいと思うので、親御さん、少なくとも高校卒業までは学校優先でお願いしますよ。
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劇的なゲームでファイナルファイブ確定
ファイナルファイブ確定。ジャック・ロビンソン、今シーズン2勝目の劇的なゲームでファイナルファイブメイク。優勝しか可能性がなくて、そこ優勝して決めるって、あまりないかなぁ、と思う。全盛期のケリーとかアンディとかミックとか、強い人には時々あることだけど、絵にかいたような逆転劇。
まぁ、タヒチだから、ありそうといえばありそうだったけど、グリフィンといい、このジャックといい、ここにファイナルファイブ入りがかかっている人たちが強かった印象がある。
押し出されてしまったのは五十嵐カノア、イーサン・ユーイング。
カノアはワイルドカードのミヒマナ・ブレイとのエリミネーションラウンドで、リスタートのある波の来ないヒートに当たり、なんか、らしくない感じで敗退してしまった。
イーサンはクオーターで同じくファイナルファイブを狙うグリフィン・コラピントと直接対決。負けたほうはジャックロボが優勝すると6位になるという、なんかものすごいドラマの勝負だった。
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アメリカの祭典USオープンはアメリカバンザイな結果
アメリカの祭典USオープンは、リーバイ・スロウソンとソウヤー・リンドブラッドのアメリカバンザイな結果。大原洋人10年ぶりの表彰台かと思われたが惜しくも3位。カノアは5位。
USオープンというと、あのハンティントンのピア、ぎらぎらな太陽、汗だく、人混み、砂埃、午後のオンショアに逆光のキラキラタイム……と過酷な感じしか思い浮かばないけど、海に向かって右側に見えるピアの向こう側、サウスサイドがカリフォルニアのサーフィンの歴史の始まりと言われていて、すでに100年も前の話になる。
波はけっこう癖があって、得意な人と不得意な人にはっきり分かれると思う。日本人選手はけっこうここの波に合うような印象がある。潮の悪いときとかオンショアの午後とか、しょぼいコンディションが日本のしょうもないビーチブレイクと通じるのかもしれない。10年前に優勝したときに洋人は、そのハンティントンのしょぼい波が好きだと言ってたっけ。
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20年経っても色褪せないどころか後世に影響を与えたヒート
コナー・オレアリーの素晴らしい波での素晴らしいパフォーマンスで終了したJベイだけど、試合の前にいくつかWSLサイトにニュース的なものが上がっていて、その中に2005年のアンディ対ケリーのドキュメンタリーみたいなのがあった。
BATTLE FOR...
初優勝&初10点満点で話題総取りのコナー・オレアリー
コンディションの整ったJベイのファイナルデー、話題総取りの活躍はコナー・オレアリー。CT2度目のファイナルで初優勝、セミでは初の10点満点のオマケつき。
あの10ポイントライドは現在のバックハンドサーフィンにおける世界最高峰のパフォーマンスだったと思う。まぁ、コナーの前のフィリッペのちょっとカバーした感じのダブルバレルに8点出しちゃったから、もうあれは10点しかないよね。ミドルセクションのバレルから出てきて当てた時点で10点、スケールがまだあるならそのあとの分入れて15点でもよかったかも(笑)。
もう本当にサーフィンは体格の時代だな、と改めて思った。何しろコナーの足腰と来たら、ツアーイチぶっといかもと思うから。ここ数年でまた大きくなっていると思う。
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波数が少ないときのセオリー
ジョーディ、負けちゃったね。まぁ、コンテストあるあるなんだけど、ああいういい波の波数が少ないときに待っちゃうって、長い観戦経験則から言わせてもらえばダメかなぁ、と思う。スタートの6点台はいいけど、マルコ・ミニョーに7点返されたら即座に2本目の6点は返しておく、という序盤の攻防は、心理作戦的な面でも必須だったかなと思う。ひっくり返されたら大きなリードは取れなくてもすぐにひっくり返しておく、というのは波数の少ないときのセオリーだと思う。エクセレントが出せる波がバンバン来るコンディションなら待ってもいいけど、来ないときは1位を1秒で長くキープする感じの戦い方が安全だ。
持ちスコア1本で待つというのは非常に危険だ。長い時間待てば待つほどあれじゃない、これじゃないになるし、身体は冷えるし、残り時間が少なくなれば次の波がワンチャンスとなって、ますます選びすぎてしまうし、プライオリティを手離すのも怖くなる。その間に今回のように、自分が見送った波で相手が攻めたら、うまく行っちゃってスコア固められちゃうって、何度見たことか。特にああいう飛べるコンディションだと、それなりのポイント出ちゃうからな。ミニョーの勝因はまさに飛びだったし、アンダープライオリティでやれるだけのことをやったら上手く行っちゃったという、ホント、コンテストあるあるだった。
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